DXチャレンジ
令和5年度を「DXチャレンジ元年」として、
商工会組織全体で取り組むことを宣言しました。
事業者DX推進支援
DXの必要性を感じつつ、取り組みについては様子見が多数を占めているなか、事業者の持続的発展のためには、DXによる生産性向上が不可欠となります。 職員と専門家の連携によるDX推進支援体制により、事業者のDX推進に取り組みました。
(株)HEISEIWORKS
会社の急成長に伴い多方面で不具合が発生
DX化で情報共有を一元化し迅速で正確な取引の実現へ
取引数、社員数が増加し
必要な情報の共有が困難な状態に
(株)HEISEI WORKSは、マシニングセンターやNC旋盤を使った金属部品の製造を行っている企業です。車や船、産業用機械など、受注先は幅広く、特にミクロン単位の精密加工を得意としています。また、多品種・小ロットに対応できるのが強みで、取引先は県内外に100社以上。2015年の創業以降、急激な成長を遂げてきました。代表取締役の平沢さんと奥さま、製造部長の亀本さんの3名でスタートし、今では従業員数が12名に増加。それに伴いこれまでのやり方では、様々な不具合が発生するようになりました。これまでは日報等がなく、一部の人しか進捗管理ができていない状態。取引が増えるにつれ、図面の枚数も増えていき、それぞれの納期や外注の有無など、細かな情報まで管理することが難しくなっていました。工場内のホワイトボードで工程管理を行っていましたが、現場でないと確認することができないため、社員全員がどこにいても同じ情報を共有し、作業の効率化を図ることができる新しい基幹システムの構築が必要となっていました。
生産管理システムの導入から
さらにステップアップしたDX化へ
この課題を解決するために、2020年には製造業に特化した生産管理システム「テックス」を導入。それまでエクセルを使って請求書や納品書を作成し、入金管理まで行っていましたが、現場だけでなく事務でも情報の共有が難しくなっていました。テックスの導入により、3名の事務員が同じ情報を管理できるようになり、作業効率は格段にアップ。製造部門では請求書、納品書の作成に繋がる原価計算や工程管理をテックスで行い、スムーズな品質管理・コスト管理を実現しています。しかし導入から3年が経ち、さらに社員数、取引数が増加するにつれ、納期が遅れるなどのトラブルも発生。現場では、全体で情報共有するための様々な対処法を実践してきましたが、テックスでも管理が追いつかなくなっていました。
相談を受けた呉広域商工会の佐々木経営指導員は、その場しのぎの対応ではなく、全体的なDX化に取り組んだ方がいいとアドバイス。商工会の紹介で専門家派遣を受け、2023年からDX化に着手しています。これまでテックスで足りない機能は人の手で行っていましたが、ミスなく正確に、素早く管理や作業ができるようにするため、進捗管理ソフト「ブラビオ」の導入を検討しています。さらにパソコン作業を自動化する「PRA」を活用することで、これまで以上に作業の効率化を図りたいと考えています。また、これまで使い切れていなかったテックスの機能にも改めて着目し活用していく予定です。
複数のシステムを組み合わせ
自社の強みを最大限に活かせる仕組みづくりを
同社の売上が伸びている理由は、少量・多品種の製造が可能な技術力と対応力。これを守っていくことが、これからの時代を生き抜くカギだと考えています。この企業価値を維持し高めるために、DX化は避けて通れない道でした。
2023年にM&Aを実施した別会社は、同社と真逆の少品種・大量生産が中心。今回のDX化で同社をデジタル化するだけでなく、M&A先にも取り入れて進化させていきたいと考えています。平沢さんは「これまでは自分の頭の中で全て管理していましたが、規模が大きくなり社員も増えていく中で、いろいろな不具合が発生するようになりました。今回の取り組みで、自分がどこにいても、誰でも同じ情報が把握できる環境を整えることができるようになり、迅速で正確な作業が可能になります。本格的な運用はこれからですが、本格稼働したら新規の顧客開拓にも力を注ぎたいです」と話し、今後の業務拡大にも意欲的を見せていました。
企業名/株式会社HEISEI WORKS
概要/金属切削加工
従業員数/12名
住所/東広島市黒瀬町津江4956-1
向井農機具センター
販売管理システムの導入で複数の課題を一度に解決
今後、広がる顧客のニーズにも対応できるように
重複して手書きする事務作業が
奥さまの大きな負担に
農業機械の販売や修理などを行っている「向井農機具センター」はご家族4人で営む家族経営の企業。近年は地域の高齢化に伴い、農作業が難しくなってしまった農家のため、稲の刈り取りから乾燥、袋詰めまでを行う「ライスセンター」としての依頼も増加しています。田植えや稲刈りなど農作業そのものの依頼も増えており、農業に関わる幅広い事業を展開しています。特に稲刈りの季節には、家族総出で現場に出るなど店舗が無人になることも。特に奥さまが一人で担当している事務作業は滞り、日々蓄積していく事態。事務作業の大きな流れは、各自が作業内容や売上を記載したノートの内容を1冊のノートにまとめ、そこから売掛帳を記載し、請求書を記入。同じ内容を何度も転記する二度手間三度手間に加え、忙しい中での売掛金の管理は、二重請求してしまうなどの人為的ミスも発生していました。
以前、経理に関する困りごとを尾道しまなみ商工会にし、ネットde記帳で解決した経験のあった奥さまは、同商工会に再度相談。土佐経営指導員はDX診断を勧め、その結果からDX化に取り組むことで作業の軽減と効率のアップが見込まれることが分かりました。
システムの導入で驚くほど作業が軽減
情報共有でスムーズな経営を実現
現在の課題は「重複した作業の効率化」「ミスのない売掛の管理」「情報共有」の3点。専門家とともに課題を洗い出し、課題を解決するための手段として販売管理システム「販売王」の導入を検討しています。
「販売王」を活用すると一度の入力で売掛の管理、請求書の発行、入金確認、在庫の管理まで可能になります。「全員で情報を共有することができるようになり、行き違いなどの人的ミスもなくなり全ての作業がスムーズになるはず」と奥さまは期待に目を輝かせていました。「人を雇うと給料が発生したり、保険関係などの手続きも大変です。仕事内容が多岐に渡っていく中、家族4人で経営していくためには業務の効率化が急務でした」と代表の向井仁一さんも話します。
顧客のニーズを掘り起こし
時代に必要とされるサービスを
高齢化により農業をする人が減り、今後は農業機械が売れなくなると予測してさらに業務の幅を広げていく必要があると考えている向井さん。「山が多くなると草刈りに必要な機械のニーズが増えてくるかもしれません。10年先を見越して、時代のニーズに合った商品やサービスを掘り起こして提供していきたいです」と話します。
DX化に取り組んだことが、新しい事業にも着手する余裕を生み出していました。「まずはこれまでのデータを入力していくことからスタート。春の田植えが始まるまでには本格稼働させたいです」と奥さま。効率化に向けての準備が急ピッチで進められていました。
企業名/向井農機具センター
概要/農業機械の販売・修理・整備等
従業員数/3名
住所/尾道市御調町徳永1-1
福山アルミ建材(株)
スムーズな事業継承にも繋がるDX化
ソフトの整備で国内全域が施工エリアに
事務作業の効率化をきっかけに
社内全体のDXに着手
「福山アルミ建材株式会社」はYKK APを中心としたアルミサッシの販売・施工を行っている企業です。一般の住宅だけでなく、大手製鉄所の工場内工事の請負や近隣コンビニの店工事、ホームセンターなどの受注工事の請負など、幅広い業務を展開しています。最初に福山あしな商工会に相談を持ち掛けたのは、代表取締役である河村実さんの奥さま。事務の中心を担う奥さまは、労務や税務、パソコン操作などの困りごとを、その都度商工会に相談していましたが、3代目となる息子さんへの事業承継が数年後に決まっていることもあり、「事務作業を効率化したい」と三谷指導員に投げかけました。それをきっかけに、スムーズな事業承継を実現するためにも、三谷指導員の勧めで専門家とともにDXに取り組むことになりました。
情報共有によりスピード感のある
対応が可能に。営業力もアップ
これまでは各自が現場から帰社後に手書きで記入している日報から、様々な作業を経て請求書の発行を行っていました。いくつもの作業を挟むことで伝達漏れやミスが起こることもあります。また、現場ではその日の進捗をホワイトボードで管理。日にちや場所、担当、施工内容など、案件が増えるにつれて分かりにくくなり、情報共有に困難をきたしていました。過去の施工工事の情報も大量に紙ベースで管理していたため、問合せへの対応や見積書の作成で参考にしたいケースを探すのにも一苦労。今回導入を検討している「Notion」は、メモやタスク管理、データベースなど様々な機能を一元的に使うことができるクラウド型の万能ソフトです。日報をソフトに落とし込む作業をすれば、社員全員で情報共有でき、いつでも必要な情報を得られるようになります。既にスマートフォンを現場の全従業員に支給しており、連絡ツールにラインを活用することで連携を高めていますが、これにより、突然の案件や変更にも応えられるようになり、その結果、営業力の向上にも繋がると考えています。
自社のDX化を機に
地方企業が目指す新しいモデルへ
現在、先述のソフトを試験的に運用しながら検討中ですが、河村さんは「これまでもいいと思ったものは、ひとまず取り入れてきました。検証してダメだったら止めればいい。失敗を恐れず、とりあえずやってみることが大切」と話します。社内での運用が軌道に乗れば、今後は東京や大阪エリアといった遠方の案件にも活用していく予定です。「これまで遠方の案件では自社の社員が出張できない場合、その近くのメーカー担当にお願いするしかなく、情報の共有が困難でした」と河村さん。ソフトを活用すれば、県外の職人の動きがどこにいても把握できるようになり、格段に管理がしやすくなります。また、今回のDX化に専門家として参加している児玉さんは、「国内には、後継者がいないためやむを得ず廃業する同業者も少なくありません。DX化することでそうした企業とも協力や提携をすることができ、事業の幅が広がるだけでなく、その地域が持つ課題を解決する一翼を担う存在になるはずです。地方企業の新しい姿としてトランスフォーメーションする可能性を秘めています」と今後の進展にも期待を寄せています。
企業名/福山アルミ建材株式会社
概要/アルミ建材の販売・施工
従業員数/11名
住所/福山市芦田町上有地2224